海外のある町での出来事です。その町の美術館では、毎年恒例の絵画展が開かれていました。その年のテーマは「平安」でした。多くの画家たちが「平安」を題材にした作品を描き、この絵画展に応募しました。のどかな田園、静かな森の小道、せせらぎ、夕日が沈む穏やかな海辺、公園のベンチで寄り添うカップルなど、会場となった美術館には心を和ませる素晴らしい作品が何枚も展示されました。
審査員たちによって、受賞作品を決めるための投票が進められていきました。最後まで残った数枚はどれも素晴らしい作品でしたが、最優秀賞は、他の作品とは全く異なる絵でした。キャンバスいっぱいに、岸壁に打ち付ける嵐が描かれていました。一見すると、どこに平安が?と思える作品でしたが、よく見ると、岸壁の中ほどに小さなくぼみがあり、そこに雛を抱えた母鳥が見えます。雛たちは母鳥の翼の下で、安心しきって眠っています。確かに、そこに「平安」がありました。この絵は「嵐のただ中にある平安」と言う題でした。
人は、何の問題もないことを平安といいます。しかし、何の問題も起こらない人生などありません。私たちの人生を多くの嵐が襲うのです。神が与えてくださる平安は、環境や状況に決して左右されない確かな平安です。